woman

婚活市場ですれ違う男女の意識

婚活に積極的なのは男性よりも女性

2008年2月に山田昌弘・白川桃子「「婚活」時代」(ディスカヴァー携書)が発売されて以降、「婚活」という言葉は一時的なブームで終わることなく、着実に社会に定着していっています。

ブライダル総研「婚活実態調査2018」によると、各年に結婚した人のうち「婚活サービス」(結婚相談所、婚活サイト・アプリ、恋活サイト・アプリ、婚活パーティ・イベントの4サービス)を利用して「結婚できた」と回答した比率は近年増加しており、2017年は10.4%と約10人に1人の割合まで高まりました(注1)。

同調査によると婚活サービスの利用経験があるのは、男性よりも女性の方が多くなっています。また「出生動向基本調査・独身者調査」(2015年)でも「いずれ結婚するつもり」と回答した男性は85.7%に対して女性は89.3%と、女性の方が結婚する意欲が強くなっています(注2)。

婚活に対して積極的なのは男性よりも女性であるという状況になっています。

注1)ブライダル総研「婚活実態調査2018」(2018年):https://souken.zexy.net/research_news/konkatsu.html

(ブライダル「総研婚活実態調査」HP)

注2)国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査・独身者調査」:http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html

(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」HP)

女性の「経済的メリット志向」が高まる

結婚のメリットには大きく「心理的メリット」「経済的メリット」があります。

「心理的メリット」とはパートナーと親密な関係であることによる心理的な満足感や安心感などのことです。

「経済的メリット」とは結婚相手との共同生活により労力、モノ、カネなどを補完しあえることです。

近年、女性において「心理的メリット」よりも「経済的メリット」を求める傾向が強まっています。「出生動向基本調査・独身者調査」の「結婚の利点だと思うもの」の時系列推移をみると「精神的な安らぎの場が得られる」「現在愛情を感じている人と暮らせる」が低くなり(男女)「経済的に余裕がもてる」が高くなっています(女性のみ)。

画像出典元:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査・独身者調査」http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html

(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」HP)

「経済的メリット志向」が高まった女性にとっては、婚活サービスが多様化し、検索で希望の年収の相手を簡単に探せる環境になってきたことは婚活ブームの追い風になっているのかもしれません。

婚活は”ハイスペック男性探し”という意味合いが強くなった

婚活サービスを利用する女性は男性に求める希望年収が高い傾向があります。

結婚相談所大手ノッツェが未婚の会員を対象にした「恋愛・結婚意識調査」(2012年)では、女性が男性に求める希望年収「500万円以上」が56.9%です(注3)。

それに対して、内閣府が一般的な未婚者(20~49歳)を対象にした内閣府「少子化社会対策に関する意識調査」(2018年)では希望年収「500万円以上」が46.0%と、婚活サービスを利用する女性の方が希望年収が高くなっています(注4)。

このことは女性にとっての婚活が「結婚相手の男性を見つけるため」というよりも「ハイスペック男性を厳選するため」という意味合いをもっているからだと思います。

注3)ノッツェ「恋愛・結婚意識調査」(2012年):http://www.nozze.com/service/check/vol14.php#nenshu

(ノッツェ「恋愛・結婚意識調査 Vol.14 結婚相手に求む条件とは?」HP)

注4)内閣府「少子化社会対策に関する意識調査」(2018年):https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2019/r01pdfhonpen/pdf/s1-6-1.pdf

(内閣府「令和元年版 少子化社会対策白書」HP)

 

婚活ブームの火付け役、山田昌弘は2018年のニュース記事で次のように述懐しています。

〈「『婚活』時代」が訴えたかったのは次の2点だった
(1)待っていたって結婚はできない
(2)夫に経済的に依存する結婚を目指すのは無理。女性も共働きを目指すのが良い

ところが、実際には「婚活=『いい男の奪い合い』と誤解された。数少ない、収入の安定した男性を捕まえるために、早く活動しなくちゃいけないというふうに理解されてしまった〉

「誕生から10年「婚活」生みの親が男と女に鳴らす新たな警鐘」:https://www.sankei.com/premium/news/180120/prm1801200015-n1.html

(産経ニュース 2018年1月20日)

結婚に利点を感じない未婚男性の増加

女性が婚活に一生懸命になる一方で、男性は年々結婚に利点を感じなくなってきています。

「出生動向基本調査・独身者調査」によると「結婚することは利点があると思う」と回答した比率は、男性は1986年に69.1%だったものが2015年には64.3%へと減少し、女性は1986年に70.8%だったものが2015年には77.8%へと増加しました。

女性が結婚に利点を感じるようになってきた一方で、男性は結婚に利点を感じなくなってきたのです。

画像出典元:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査・独身者調査」:http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html

(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」HP)

 

では、なぜ男性は結婚に利点を感じなくなったのでしょう。

「出生動向基本調査・独身者調査」では男性(30~39歳の未婚者)の「現在独身でいる理由」は、長期的(1992年から2015年への変化)にみると「結婚資金が足りない」が最も顕著に増加しています。

また、短期的(2010年から2015年への変化)にみると「結婚する必要性をまだ感じない」「独身の自由さや気楽さを失いたくない」「今は仕事に打ち込みたい」が増加しています。

ここから考えられるのは、男性が結婚に利点を感じなくなったのは、男性の収入が伸び悩む中で、女性の結婚への「経済的メリット志向」が高まったため、「お金が足りない」という意識が高まったからではないでしょうか。そして手が届かない結婚よりも独身生活に積極的な意義(気楽さ、仕事に打ち込む)を見出だそうとしているのではないでしょうか。

一方、女性についてみると「独身の自由さや気楽さを失いたくない」「結婚する必要性をまだ感じない」が減少し、「異性とうまく付き合えない」が増加しています。女性は結婚に対して積極的になっているもののうまくいっていない様子がうかがえます。

画像出典元:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査・独身者調査」:http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html

(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」HP)

 

さらに同調査(2015年)の「独身生活の利点だと思うもの」では男性は女性と比べて「行動や生き方が自由」が16.0%、「金銭的に裕福」が13.1%、「家族を養う責任がなく、気楽」が14.1%高いです。

誤解を恐れずにいえば、男性は女性よりも結婚に対して「不自由で」「お金がなくなり」「責任が重くて苦痛」だと考えているのではないでしょうか。

画像出典元:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査・独身者調査」(2015年):http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html

(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」HP)

ハイスペック男性は競争率が高く女性を厳選する

ところで、女性がハイスペック男性を狙うことは合理的なのでしょうか。

鈴木・須藤・寺田・小黒「学歴・収入・容姿が成婚と配偶者選択行動に与える影響」( 数理社会学会「理論と方法」、2018年33巻2号)という論文では、大手企業の婚活サービスの会員の行動履歴を分析した結果、男性のお見合い申し受け件数は、社会経済的条件(年収、学歴)などで説明できる割合が女性よりも高いという傾向が明らかになりました。

つまり男性は選ばれる基準が明確(年収、学歴など)であり、人気がある人は女性の場合よりも一極集中しやすいということです。また、男性が高学歴、高年収であるほど「許容率」が下がるという傾向も明らかになりました。つまりハイスペック男性は、女性を厳選するということです(注5)。

注5)鈴木・須藤・寺田・小黒「学歴・収入・容姿が成婚と配偶者選択行動に与える影響」( 数理社会学会「理論と方法」、2018年33巻2号):https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjams/33/2/33_167/_article/-char/ja

(「J-STAGE「理論と方法」HP)

ハイスペック男性は「経済的メリット志向」の女性と相性が悪い

ハイスペック男性が女性を厳選するということは「出生動向基本調査・独身者調査」(2015年)でも確認できます。

同調査では、男性は高卒から大卒になると女性の「人柄」を重視する比率が約10%増加します(注6)。学歴が高くなることで結婚相手を厳選する傾向は女性にもありますが(女性の場合、「経済力」、「職業」、「学歴」などが厳しくなります)、男性の場合”内面”を厳選をするようになります。

注6)国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査・独身者調査」(2015年):http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html

(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」HP)

 

このように人柄を重視するハイスペック男性にとっては、結婚を経済的メリットだと考えるタイプの女性は軽蔑するでしょうし、警戒もするでしょう。自分から地位やお金がなくなったときに手のひらを返される可能性がある女性はリスキーだからです。

つまりハイスペック男性狙いの婚活は、競争率の高さと厳選志向の2つの観点から、失敗する確率が高く、女性の貴重な若い時間を浪費するだけのハイリスクな行為なのではないでしょうか。

女性にとって成功しやすい婚活とは

さて、ここまでをまとめますと、女性は男性よりも婚活にメリットを感じており、高年収の男性を探す傾向になっています。

それに対して男性は経済的なこと(お金の不足)を理由に独身を選んでいます。そして女性が狙っているハイスペック男性はハイスペック狙いの婚活女性とは相性がよくないです。

それでは今の時代、女性にとってどのような婚活が成功しやすいのでしょうか。色々な「婚活本」を参考にした結果、以下の5つにまとめられました。参考にしていただければと思います。
 

①若いうちから異性を探す
・女性は若いほど男性に人気がある
・同世代にはまだ魅力的な男性が多く残っている

②自分から積極的にアプローチをする
・自分からアプローチをしない女性が多いためアドバンテージになる
・男性は女性にアプローチされることに慣れておらずコントロールしやすい

③将来性で選ぶ
・ハイスペック男性は婚活市場に少ないし、失敗しやすい
・将来性がある男性でも現在のスペックが低ければ倍率が低く成功しやすい

④高望みをしない
・条件の高さや多さは自分が思っている以上に出会える確率を下げる
・低成長社会では普通だと思っていた感覚が高望みになりやすい

⑤男性比の高いコミュニティに入る(工学部、オタサーの姫など)
・需給のバランスを理由に”売れ残る”ため魅力的な男性が残りやすい
・競合女性が少ないため比較的魅力的な男性を見つけやすい