グッチやルイ・ヴィトンやエルメスといったハイブランド。
これらのハイブランド品そのものに興味がない方も、こういったブランドの販売スタッフがどのように高価な商品を日々販売しているか、その販売技術や商品をほしいと思わせる話術ってどんなものなのか興味が沸きませんか?
世界最高峰の高級ブランド品を売る販売スタッフたちは、売る技術にも非常に長けています。
グッチやルイ・ヴィトンを代表とするハイブランド店の接客は、いわゆるセールストークっぽくないのですが、やはりよくよく観察していると、スタッフの話術の中に、高度な“売る技術”を垣間見ることができます。
そして、その中には、巧妙な売る技術が紛れ込んでいることも・・・
すべてがそうだとはいいませんが、筆者などはそれにひっかかって、ついつい買わされてしまうのです。
仮に、そこからビジネス上の学びがあれば・・・少しでも使ってしまったお金を回収できるかもしれませんし、同時にハイブランドでの接客は、ちょっと大枚をはたいたとしても、「買ったよかった」と思わせる価値があるので、つい足を運んでしまう魔力があるのです。
では、ハイブランド店員の巧妙な売る技術とはどのようなものでしょうか。
(もちろん、すべてのスタッフがそうだとは言えないですし、接客がかなり店舗の自由に任されていて、スタッフの裁量に依存していることをご承知おきください。)
言い切る
有能な販売スタッフは、「言い切る」ことをします。
「新作のキャップでございます。すごくお似合いになります」
こんな感じで断定口調なんです。
「新作のキャップでございます。どう思われますか?」
とは決して聞きません。ここポイントだと思います。
断定口調で話してこられますから、ついついYESで答えてしまいそうになります。
このYESが最初に出ると、心理的にコンバージョン(購入)につながりやすくなるのは想像に難くないのではないでしょうか。
YESからNOへは変化しづらい
おそらく、わかってやっているのだと思います。
一度YESと口に出してしまうと、次にNOというのが極めて難しいということを。
前回のYESを覆すことになり、自分の中の一貫性が保たれなくなるので、顧客サイドとしてもその次のセールストークを断りづらくなるのです。
これは危険ですね。
普通に話しているだけで、次々買わされそうになります。
よく観察していると、スタッフはとても上品に、丁寧に、腰が低く、しかし押し切ってきます。
ビジネスでYESを引き出そう
これは自分自身のビジネスにも応用できます。
交渉事があるとき、「YESを○回引き出せ!」などはよく語られることです。
しかしどうやってYESを相手から引き出したら良いのでしょうか?
ちょっと悩みますよね。
でも簡単で、上記のハイブランド店員を参考にしながら、同調していきます。
「この企画。私は良いと思うんです」
だと、相手によってはNOという返事が返ってきます。
「この企画。私は良いと思うんです。どうですか?」
この聞き方もいまいちよくありません。
対象の企画に否定的な方であれば、NOが返ってきます。
そこで
「この企画。ナイスでしょ!」
と言ってしまうのです。
そうすると、相手はついつい「そ、そうだね!」と答えてしまうのが想像できませんか?
これは同調の話術でYESを引き出しています。
ハイブランドの店員でも、ビジネスパーソンでも、言葉の使い方には繊細でなくてはなりません。そんな話術を駆使しながら、上手に仕事を進めています。自分自身の仕事に取り入れられるのではないでしょうか。
フット・イン・ザ・ドア
グッチやルイ・ヴィトンの上手なセールスはまだまだ続きます。
ところで、営業の世界で有名な手法に、フット・イン・ザ・ドアというテクニックがあるのを聞いたことがあるのではないでしょうか。
開けたら最後、ぐっと足を差し込まれ、ドアのスキマで抜けなくなり、玄関を閉められなくなるのでセールストークを聞くハメになり、結局、買わされてしまう、というのが昔のフット・イン・ザ・ドアです。
フット・イン・ザ・ドアは、今では使われていません。
みんなのセキュリティ意識が高まって、めったに知らない人をインターホンで応答しないですし、ドアを軽く開けることもないからです。
ただし、この手法はビジネスの世界では普通に使われています。
交渉ごとのシーンにおいてです。最初に簡単なお願いごとをして、相手からYESを引き出します。次に難易度の高いお願い事をすると成功するというものです。
巧妙なフット・イン・ザ・ドア
では、私がハイブランド店で体験した、巧妙なフット・イン・ザ・ドアとはどのようなものでしょうか?
それは、本当はNOなのに、YESと答えざるを得ない質問を投げかけられたのです。
その後で、難易度の高いお願いが来ると、断れなくなるのです。
実際に体験したセールスです。
店員「渡辺さま、猫、好きですか?」
私「はい」
店員「これ猫をモチーフとした新作のバッグです。珍しいですよね」
私「はい…。」
という感じです。
猫は別に好きじゃありません。
しかし、このシーンでは最初の「猫、好きですか?」の質問には、NOなのにYESと答えてしまいました。猫を好きじゃないと公言するのはなんとなく抵抗があるという心理です。
これは、相手を矛盾した状態に追い込んで強引にYESを引き出し、NOを言いづらくするテクニックです。
巧妙なフット・イン・ザ・ドア。最初にNOのものをYESと答えることで、次のNOが極めて言いづらくなるという裏テクニックです。
返報性の原理を使おう
そして返報性の原理も、ハイブランドの現場で多く使われています。
フカフカのソファでコーヒーやお茶がでるのです。
人間、なにかしてもらうと、「返さないと」という気持ちが働きますから、最初に心地の良い接客を与えてリラックスしてもらい、お客さんは気分がよくなったところで購入してしまいます。
これは返報性の原理で、ビジネスに限らず日常生活でも使える心理法則ですよ。
なにかお願いごとがあるときは、先にgiveするのです。
周囲の人にたくさんgiveした人は、takeしようと思わなくとも勝手にお礼がやってきて、どんどん金銭的にも人間関係的にも豊かになることが知られています。
心理学を仕事に応用しよう
こうして、使わないバッグが増えてしまいました。
バッグが気に入らないわけではないのですが、くやしいので、こうして記事にして昇華しています。
ただ、これらのテクニックは、実際のビジネスの現場でも応用できます。
つまり、私はただハイブランド店で不要な散財をしてしまったのではなく、社会勉強にもなるはずと、信じています。
そういうことにしておいてください。
誤解を招かないように説明すると、ハイブランド店はそうしたテクニックを駆使して不要な高級品を無理に売りつけているわけではありません。
確かな品質とデザインを兼ね備えた逸品は、自然に高値になり、購入側もある程度のゆとりがある層がターゲットなので、無理に売らなくても良いのです。
特にルイ・ヴィトンは、「自動販売機でも売れる」といわれるほど人気のブランドです。
そこで、自販機でも売れるブランドに対して、いかにして付加価値を出していくか、スタッフさんは日々、スキルアップに励んでいるのが垣間見えます。
最近は、若い人を中心に持たないブームや断捨離やこんまり様ブームが来ています。
しかし、とっておきの日のためにも、ハイブランドの店をのぞいてみるのは、仕事にも応用できて社会勉強になりますよ。
ライタープロフィール
名もなきライター(S.Watanabe)
Webライター歴・5年。
2014年秋に1円ライターからスタートし日が昇る前から身を粉にして働き連載多数。元エンジニアだけどテレビが好きなので、理屈っぽさとエンタメを混ぜてひねった記事が得意。
そんな過程で得た仕事ノウハウや心を動かす文章マガジンが月350円で大好評。
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