海外移住というと「毎日楽しいキラキラした生活」なんてイメージをもたれることがありますが、実際は楽しいことばかりではありません。
楽しいことはもちろんありますが、それと同時に、しんどいこともたくさん経験しました。
留学、ワーホリ、就活、大学生、フリーランスとさまざまなかたちでドイツに滞在したわたしが、自分の体験をもとに、「海外に住んで大変だったこと」と「どうやって乗り切ったか」を紹介していきます。
問題:「言葉が通じない」問題はスキルじゃなくて自信喪失
海外移住における大きなハードルのひとつは、言葉の壁ですよね。
いくら日本でしっかり勉強していっても、現地で使い物になるかどうかは別の話。知っている単語のはずなのに聞き取れない、話し言葉がまったくわからない、ネイティブの速さについていけない……そんなことは日常茶飯事です。
言葉が通じないと、「なにを言われているかわからない」という孤独感や「言いたいことが言えない」というもどかしさなど、心理的なストレスにつながっていきます。
わたしは日本でしっかりとドイツ語を勉強した気でいたので、現地で「なんでうまくいかないんだ」といじけてしまいました。相手の言葉を聞き取れず、愛想笑いをし続ける孤独な時期も……。
解決法:言葉の壁を乗り越える過程を楽しむ
しかしこの「伝わらない」ストレスが、勉強して語学力が上がるにつれ、「伝わる快感」に変わっていったのです。
最初はだれもが初心者。ネイティブと張り合う必要はありません。そう思うようになってから、気負わずにコツコツと勉強を続けたことで、毎日少しずつ聞き取れるようになり、語学学習が楽しくなって語学力もグンと伸びました。
現地で友人ができ、堂々と「わからない」が言えるようになったのも、大きかったかもしれません。
知らない単語は毎回メモして単語帳に書き写し、わからない言い回しは聞き返す。文法のミスを指摘されたら、自分のなかに定着するまでなんどもその文法を使ってみる。そういう努力を重ね、楽しみながら語学学習をしていくことができました。
問題:マイノリティの自分が適合しなきゃいけない
日本に住む人の多くは、日本国籍で日本語を母語としています。しかし海外に行けば、自分はマイノリティ。「自分の常識が通じない」「みんなが知っていることを知らない」なんてことが起こります。
たとえば日本なら、電車での通話はマナー違反ですよね。でもドイツでは電車での通話もOKです。逆に、日本ではふつうに使うマスクも、ドイツでつければ不審者扱いされることも。ボディタッチは、イヤならはっきり言わないと「OK」だと誤解されます。面接では自分が望む給料を伝えないと、低賃金になるかもしれません。
異文化体験の醍醐味とはいえ、考え方のちがいに戸惑ったり、無知から恥ずかしい思いをしたり、損して悔しい思いをしたりと、うまくいかないことも多くありました。
解決法:現地の価値観と自分のアイデンティティのバランスをとる
これも語学と一緒で、「外国人なんだからわかるわけないでしょ!」と開き直り、「だから教えてね!」と言って、みんなに教えてもらいました。
わたしは日本生まれ日本育ちの日本人なんだから、ドイツのやりかたなんてわからない。わからなくて当然なのです。
現地の価値観は尊重する。でも譲れないところは「イヤだ」と言う。たとえば、家に土足で上がられるのは絶対にイヤだみんなにと伝えています。一方で、ドイツでは人を家に呼んだ場合すべての部屋を見せるのが一般的なので、気は進みませんがゲストを仕事部屋や寝室にも案内します。
基本的には合わせるけど、譲れないところは理由を添えてちゃんと伝える。そうやって、自分のアイデンティティとドイツの価値観適合とのバランスをとっていきました。
また、わたしの場合、毎年日本に一時帰国していたのもよかったと思います。毎年日本に戻ることで日本とドイツの良さを実感することができ、ドイツ生活を続けることに疲れずにすんだのかもしれません。
問題:お金は切実!意外な出費&思ったように稼げず金欠に
海外に住んで困ったのは、予想外の出費が多いこと。
ビザの更新でも1万円かかったり、毎月の定期代として1万円弱かかったり、引っ越し先がなかなか見つからず家賃が予算オーバーしたり、ドイツ語のテストが3万円弱かかったり……。
留学していた2012年はユーロ危機直後で、1ユーロ100円以下。しかしワーホリをした2014年は、1ユーロがなんと140円を超えることも! 為替レートの変動によって、予算の計算もどんどんズレていきました。
さらに、働き先のレストランがブラックすぎてすぐに退職、その後はドイツで甲状腺疾患を患いカフェバイトも辞めることに。金欠です。
解決法:節約チャレンジとフリーライターデビュー
固定出費をできるだけ抑えるためにスマホをプリペイドにし、自炊する、保険を見直すなど、いろんな方法で節約にチャレンジしました。
しかし出ていくものはある程度しかたがないので、収入を確保するしかありません。ただ、わたしはドイツでの就活で一度挫折しているし、病気のせいでバイトもむずかしい。となれば、あとはネットです。
幸運なことに、わたしはウェブライターという仕事を見つけ、在宅ワークでお金を稼ぐことができました。
現在はインターネットを使って日本から仕事を受注することも可能なので、現地での就職がむずかしければ、ネットでお金を稼ぐというのも視野に入れるといいかもしれません。
問題:どうしたらいいかわからない場面に遭遇して右往左往
いくら語学を勉強しても、トラブルになってしまえば「どうしたらいいのかわからない」のが海外あるあるです。
空港の税関でトラブルが起こり、後日手紙がきたけど、なにをすべきなのかがよくわからない。甲状腺疾患が良くならず手術をしたけれど、体の部位の名前や医療用語がさっぱりわからない……。こんなことが起こります。
海外でトラブルが起こるのはある程度しかたありません。でもそこに頼れる人がいないと、トラブルの対処法がわからず右往左往することになります。
引越し業者にお願いするときの相場は? 結婚式ってどんな格好で行くべき? 粗大ゴミを出すときは? こんな疑問がいちいち困らせてくるのです。
解決法:自力でできることを、できないことはおとなしく他人を頼る
まずは自分で解決する努力をします。なんどもなんども役所に通い、担当者に書類の記入方法を教えてもらいながら記入。わからない制度はメモに書いてもらい、あとで自分で調べる。
時間がかかるしストレスもたまるし面倒くさいけど、他人に任せっきりにすると、自分のことを自分で把握できなくなりますよね。個人的にそれがイヤだったので、手続き関係は四苦八苦しつつも自分で解決するようにしています。
でも、自力じゃどうしようもないことも起こります。たとえば「害虫駆除ってドイツ語でなんていうの? どう調べたらいいの?」という場合。
留学中は同じく日本から来ていた留学生や大学の事務所に、現在はドイツ人のパートナーやご近所さんに相談しています。できるだけ自分でやるとはいえ、わからないことは努力しようもないので……。
もし現地でそういったつながりがない単身渡航であれば、現地の日本人コミュニティに顔を出してみたり、地域クラブに参加してみたりして、「困ったときに頼れる人の確保」をしておくといいかもしれません。
問題:海外滞在の目的を見失って自信喪失
わたしが精神的に一番つらかったのは、「海外に滞在し続ける目的がなかった」ことです。
ぼんやりとした憧れからドイツに留学、すっかりドイツが気に入り移住。でも「ドイツでこれをしたい」という目的がなかったので、現地就職を断念したうえドイツの大学を中退したとき、「なんでドイツにいるんだろう……」と自問自答するようになりました。
もっとキラキラした生活を送るはずだったのにうまくいかない。まだ帰りたくないけど、ドイツにいる理由もない。進むも退くもできない。
そんな時期が続き、一時ドイツで引きこもりのようになっていました。
解決法:張り合いがもてる海外滞在の目的を設定する
そんななか、ブログ開設を機に文章を書く楽しさに目覚め、ライターとして活動することを決めました。生計を立てられるようになったのもあり、なんとかふんばってドイツに住み続けることに。経済的余裕もできましたしね。
ただ、目的がない海外移住では、うまくいかなかったときに「なんのために移住したんだろう」と落ち込みやすくなってしまいます。
いまはもう「ドイツが好きで拠点がドイツだから」という理由でドイツに住み続けていますが、学位取得や就職といったチャレンジをする場合は、具体的になにをしたいのか、なんのためにがんばるのか、というビジョンがあったほうがいいと思います。
山あり谷ありの海外生活を楽しむために
言葉がわからずうまく馴染めない。みんなが知っている曲を知らない。予想外の出費が続く。暖房が壊れたけどどこに連絡すればいいのかわからない。もうなにもうまくいかない、どうしよう。
海外生活は山あり谷あり。すべてが自分の糧になった……というわけではなく、いま思い出してもしんどかったなぁと思ったり、単純に後悔していることもあります。
それでもやっぱりドイツでの生活で得たものは多いですし、総合的に「なんやかんやいい思い出!」と言えるくらいには、「いま」が充実しています。
インスタで見ればキラキラした順風満帆の海外生活。でも実際はいろんな苦労がつきもの。それでもそれを乗り越えれば、さらに楽しい海外生活が待っているはずです。