シャネルやホテルのアロマテラピーから学ぶ「一流のビジネスウーマン」

今や美は女性だけのものではなく、女性だからといって美を強要されることもありません。しかし年齢を重ねると、みっともなさを避けるため、またリラックスを得るため、そこそこ敷居の高いお店に出入りするようになります。

仕事の気分転換をしたり、ひとりで考え事をしたりするときには、シャネルで買い物したりホテルのアロマテラピーを受けたりしています。別に自分が美しいというわけではなく、少し上質な購買体験をしたいという希望もあってのものです。

そこで美のスペシャリストに色々なことを教わるわけですが、スキンケアやボディケアの方法だけでなく、ビジネスパーソンとしても学びがあると気が付きましたので、その知見を共有したいと思います。

本当の顧客満足とは

基本的に美は中からやってきます。

規則正しい生活習慣やバランスの取れた食生活、何よりストレスコントロールを始めとした自己管理能力が体に表出してしまうのです。私自身、一時期とても生活が苦しかった時期があります。ストレスの割に稼ぎが少なく、激安スーパーの食品を食べていたら、肌がボロボロになってしまったのです。

そこで、私はシャネルに化粧品を買いに行きました。考えてみると、生活が苦しく、安いスーパーの出どころが不明な謎の食品を食べるぐらいなら、高価格帯のシャネルに行かずに国産の食品を食べるべきだったのです。しかしその頃はきっと貧しさから心のバランスを欠いていたのだと思います。

化粧品売り場で私の肌をみた途端、シャネルのスタッフは「お客様、皮膚科に行かれたほうがよろしいです」といいました。ストレスと食生活起因の肌荒れと見えたのか、まずは生活習慣を整えるべきだと判断されたのかもしれません。

そして、私はその時はじめて、自分が少し心の均衡を崩しつつあること、もしかしたら私が向かうべきはデパートのコスメ売り場ではなく、都会で働くストレスと向き合い、自分の心を見つめることだと自覚したのです。もちろんスタッフの方はそこまで考えたわけではありませんが、なんだか見透かされたような気になって、とても恥ずかしかったのを覚えています。

今では仕事を変え、生活環境を変え、付き合う人たちを変え、肌がボロボロになるほどの窮地からは脱却できました。そして、今になって思うのです。私が店員さんだったら、はたして化粧品を求める客に売らないという選択が取れるだろうかと。

お客様は選択を間違われる

同じように、ビジネスシーンにおいて、本当に顧客のためにならない商談が発生するケースは意外とあるのです。たとえば、Webライターである私自身の例でいえば、お客様が二重の依頼をかけられるとき。ご自身が検索1位を取っているキーワードがあるのに、同じキーワードでの記事をご希望されたとき。

他にも、Webサイトを作って欲しいというご依頼において、EC機能を独自で開発してほしいと言われるお客様もいらっしゃいます。

そのときは、私も表現に最大限配慮しながら「お客様、それはおやめになったほうがよろしいです。」というようにしています。そう、あのシャネルの店員さんのようにです。

お客様は選択を間違われることがあるのです。それは決して恥ずかしいことではないですし、こちらも恥をかかせるような言い方は絶対にしてはいけないと思っています。それはビジネス上のマナーです。

しかし、どう考えてもお客様のためにならないとき。こちらは売上になるので売ることはできるけれど、売るべきではないと判断したとき。そのときは、ちゃんとお伝えするようにしています。

もちろん、私が売っているのは化粧品とは違いますから、代替案があります。上記の例でいえば別のキーワードだったり、EC機能は外部に飛ばすとご提案したりです。

ただ、あの時の店員さんのように「売らない」という選択を取るのはなかなか困難で、やはりシャネルは一流だなと感じるわけです。

目の肥えた客をうならせる方法

そんな私も最近「売らない」という選択を取ることがありました。
それは、仕事を受けているクラウドソーシングで「商品のキャッチコピーを考えてほしい」といわれたときです。

そのときは「クラウドソーシング内で大勢から募集したほうが、より良いアイデアが集まりますよ!」とお伝えしました。キャッチコピーは1本15,000円ぐらいかかりますから、受注できれば私も嬉しいです。偶然にも、シャネルの美容液と同じぐらいの価格帯ですね。ただし、キャッチコピーという、集合知が適切な仕事に対し、私が独占していては、本当にお客様のためにはならないのです。

「私もキャッチコピーを考えられますが、ぜひ公募なさってください」そうお伝えすると、お客様はなんと「あなたに考えてほしいんです」と言ってくださいました。ここにビジネスの真髄が詰まってると私は考えていて、目の肥えた顧客をうならせるには、適切なアドバイスをし、ときにはちょっとお客様の耳に痛いことも申し上げ、信頼を勝ち得て、その上で指名にて仕事がくることではないでしょうか。

何もかも相手を否定していたらビジネスになりませんが、本当にお客様のためにならないときは、NOといえることも大切です。それは、報酬が安いから嫌だというときのNOとは違いますよね。

ホテルのエステサロンからの学び

また、ホテルでエステやアロママッサージの施術を受けることもあります。もともと、サロンはホテル内にあるため敷居が高く、入店した時点である種のウォールができているのです。これは双方にとってメリットが多く、エステ側は分別のついた方だけを集客でき、こちら側もエステサロン独特の激しい勧誘がないため気持ちよくリピートができます。

このWin-Winの関係を構築することがビジネスにおいて大切だと考えていて、私でいうと、たとえば新規のメディアを立ち上げたお客様の知名度が伸びないと考えたとき、私に寄稿を依頼することでそれが実現します。私も実績ができ、読者も楽しめる、そんなWin-Win-Winの関係を目指しています。

さらに、激しい勧誘がないという観点から見てみると、私がいくホテルのエステは良い意味で私を放置してくれます。勧誘もせず、空間と心理的双方のプライバシーに踏み込まないのです。

これは常に心がけていることで、私でいうと必要以上の詮索をしないようにしています。たとえば、同業のライターさんから「報酬交渉に失敗した。顧客は自分たちよりこちらの報酬が高くなるのを恐れているのではないか」というご相談や愚痴を受けることがあります。しかし、それは先方の心に踏み込み過ぎであり、お客様に対して、たとえ心の中でも距離が少し近すぎると私は考えます。

まとめ

実社会は学びの宝庫です。

特にお金を使うことは、稼ぐ力の源泉になりえます。なぜなら、お金を使うことは経済社会への参加であり、誰かの創意工夫を肯定することだからです。そのことに気がついてから、私はシャネルやエステだけでなく、消費を楽しめるようになり、同時に仕事力も明確に上昇しました。

一流の接客は女性を一流のビジネスパーソンへと高めてくれます。心から健康的に、楽しく人生を謳歌するための手伝いをしてくれるプロフェッショナルから、学ぶことはとてもたくさんあるような気がしませんか。